紙垂とライトアップされた川

現在、某芸人が女性に対して性的暴行をしたことが話題となって各メディアに取り上げられているようですが、今回はこの事件にまつわる心理的要因について解説して行きたいと思います。

私は以前、彼が学生時代に酷いイジメに遭っていたという記事を読んだことがありました。
その時は「イジメを受けて相当トラウマに苦しんだのだろうに、それを乗り越えて今はこうして人を笑わせるという仕事で頑張っているんだな。」と、TVを見るたびにその姿に感動したものです。

しかしそれからしばらくして驚くべき情報を目にしました。
彼の二度に渡る不倫スキャンダルです。
正直そんな不貞行為をする人には見えなかったのでまさかと思いました。

しかしそれから活動休止してしばらく経つとまたTV で活躍し始めましたが・・・
その矢先、今度は女性への性的暴行。

これは完全にイジメを受けたトラウマによる心理的な弊害だと思いました。

中には「イジメを受けていた人がなんでこんなことを・・・」という嘆きながらも疑問に思う意見も見受けられました。

よく「イジメを受けた人は人の痛みがわかる」ということを聞きます。
だから人をむやみに傷付けたりしないし優しく出来るのだと。

ではなぜ、かつてあれほどツラい目に遭っていた人が、そのツラさや痛みを誰よりも知っている人が、こんな風に人を傷付けるという事が起こすのでしょうか。

獲物を狙う黒猫
・・・実は、私は彼の気持ちが少しだけわかるのです。
なぜなら私もかつてイジメを受けていたにも関わらず、人を攻撃したり支配する思考に覆われていたから。

それではその私が実体験を元にこの件の心理面を紐解いていきます。

重ねられた本の上に置かれた葉つきの枝
まず、イジメを受けた事がある人にお聞きします。
被害を受けている時、もしくはその後、どんな事を思いましたか?

「もう嫌だ。なんで自分ばかりこんな目に・・・」
こんな絶望的で悲観的な思考ばかりが頭の中を支配して毎日悩んでいたという人もいるでしょう。

「なんとかイジめられないようにしなくちゃ・・・」
必死に対策を考え、相手への接し方や自分の振るまい方など色々と試してみたりした人もいるでしょう。

「ツラい・・・誰か・・・助けて・・・」
考えることすら出来ないほど精神的に追い詰められて泣いてばかりの人もいるでしょう。

「こんなことが続くなら死んだほうがマシだ・・・」
希死念慮に囚われたり自殺を考えた、もしくは自傷行為に至った人もいるでしょう。

・・・そしてこんな人はいませんか?
「みんな殺してやりたい。みんな死ねばいい。」
こんな攻撃的で暴力による支配を望む人です。

―実は今挙げた例は私がかつて抱いていた思考です。
ただし自殺願望や自傷行為はありませんでした。
けれど「いつ死んでもいい」という意識は常にあり、毎晩寝るときには「明日目が覚めなければいいのに」と毎日願っていたものです。

これらの思考の中で私の中に一番強く根付いたのが残虐なまでの攻撃性と暴力的思考でした。

とにかく「やり返したかったのにそれが出来ない。反発も言い返すことも何ひとつ出来ない。」というこの状況とフラストレーションがイジメによるツラさや痛みよりも自分を苛立たせ、追い込んだのです。
雷光が走る黒い雲
それは本来、自身を守るための防御を目的とした攻撃の意識だったのでしょう。
しかしイジメを受け続けていくうちに認知は歪み、攻撃性だけが増長されていくのです。

やられっぱなしの状態は悔しさ、理不尽さ、恐怖、怒りなどネガティブな感情を抱えたままでになるので当然苦しくなります。
やがて年月を経ていく中でそのネガティブ感情はトラウマとなり、同時に抱えてしまったやりきれなさをどうにかしたい、それを満たせれば満足出来るかもという思い込みに囚われてしまいます。

この感情が「復讐心」です。

そしてこの復讐心を発散させるため、その機会を引き寄せようと無意識のうちに振る舞うようになります。
この時点ですでに自分の顕在意識ではコントロール出来ない状態に陥っているのです。

こうして無自覚のうちに引き寄せの法則を発動させ、復讐を果たす機会を得てしまうと一気に暴発させるのです。

それはかつてイジめた相手や支配をしてきた相手ではなく、自分より弱い存在に刃が向けられるのです。
トラウマにより、自分を傷付けた相手には「逆らえない」と潜在意識に強く刻みつけられているからです。

なので対象は「おとなしい人」「女性や子供」「自分より立場や力が下の人」「優しい人」もしくは「自分によく似た性質の人」を選んだりします。

こうして皮肉にもかつての被害者は加害者へと立場を変えてしまうのです。

そしてこの時、攻撃を受けて傷付いた人がまた復讐心を抱いてしまうと、それは連鎖となり繰り返されることとなるのです。

舞い上がる火花

なので今回の某芸人の件もその様なトラウマによる復讐心や認知の歪みから不貞行為を繰り返したり、暴力的な行為に及んだのでしょう。
表向きは愉快な素振りを見せていますが、彼の中には相当癒えない憎しみや苦しみが渦巻いていたのだと思います。

しかしだからと言って同情はしません。
不倫や性的暴力などモラルに反したり法に触れる事は許されませんから。

けれどこれを法で裁いたり反省を述べさせたところで意識を変えるのは容易ではありません。
後は本人が自分のトラウマとどう向き合うか、それだけなのです。

「イジめた奴を絶対許さない」「虐待した親をなんとか反省させたい」
これだけではイジメや虐待による弊害で発生した攻撃性や支配欲、暴力思考は治まりません。
なぜなら自分と向き合っていないからです。

二羽のミヤコドリ

重要なのは「相手にどうさせるか」ではありません。
イジメを受けてしまう自分の問題点と向き合うということなのです。
それと向き合わない限りはいくら逃げても環境を変えてもまた新たなイジメの標的になるだけなのです。

根本的な部分、つまり自分の潜在意識を変えなければならないのです。
相手を変えることは容易ではありませんし、そこで相手を変えられたとしてもまた別の暴力的で支配的な人を引き寄せてしまい、いつまでも「そういう」関わりを続けることになるからです。

「イジメはイジめられる方が悪い」
この言葉、私は最初は大反対でしたが今なら本当に納得出来るのです。

ただ、イジめられても仕方ないからイジめていいという認識だけはしないでください。

攻撃や暴力、支配をいくら振るったところでかつての加害者と同類の低俗なレベルに堕ちているだけでトラウマは癒やされず、復讐心も満たされずいつまでも空虚なままにしかなりません。
この被害者が加害者になるという「立場逆転疑似体験」はイジメがなくならない原因や、虐待の連鎖を引き起こすだけです。

被害者意識から発生した復讐心が強く、なんらかの攻撃をしてやりたいと自然と思考して思っている人がいたら、どうかこのメカニズムを頭に入れてください。
昔の私のように友達を精神的に追い込んで相手の夢や将来を壊してしまうというこんな事を起こす前に自分を止めてあげてください。

もし、ひとりでどうにもならないというのであればお手伝いをさせてください。
一緒に本来の優しいあなたを取り戻しましょう。

ここまで読んでいただきありがとうございました。

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